北アルプス 常念山脈(蝶ヶ岳~常念岳~大天井岳~燕山荘)縦走|個人山行ブログ|山行ブログ|湖南岳友会のホームページ

北アルプス 常念山脈(蝶ヶ岳~常念岳~大天井岳~燕山荘)縦走

個人山行ブログ
9月13日~16日
北アルプスの常念山脈を蝶ヶ岳から、常念岳、大天井岳、燕山荘まで縦走しました。最近はこのコースはパノラマ銀座と呼ばれているようで、その名のとおり、槍・穂高などの大パノラマを楽しみながら歩きました。
常念岳の登りは疲れました。
 
9月13日(日)
天候がすっきりしないので迷いましたが、山の天気予報「ヤマテン」では翌日から晴れるとの予報なので、早朝に滋賀の自宅を出発、JRで高山へ、そこからバスで平湯温泉経由で上高地に入りました。
JR高山線が雨の影響で2時間ほど遅れたので、14時半ころに上高地バスターミナル到着。近くに小梨平キャンプ場があるのですが、1ヶ月ほど前にクマがテントを襲う事故があったので、閉鎖されています。
そこで徳澤園へ向かいます。日曜日の午後遅くなので、ほとんど人と出会いません。いつもは急ぎ足で通過することが多くてゆっくりと楽しむことがないですが、たしかに良いところです。
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16時過ぎに徳澤園に到着。これまでここでテントを張ったことはなかったのですが、きわめて快適なテント場です。下はやわらい草地で、どこも水平で、どこで張ってもよいのですが、混んでいないので、人と離れているところを選びました。
山に入る前にこんなところでテント泊も良いですね。
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徳澤園は1950年代後半に書かれた井上靖の小説「氷壁」の舞台となったところで、「氷壁の宿」の看板がかかっています。小説「氷壁」は、徳澤園の前にそびえる前穂高岳東壁で実際に起きた、ナイロンザイル切断事件を一つのモチーフとしています。この事件は切れるはずはないといわれていた、当時出回ったばかりのナイロンザイルが切れた事件で、登山用品の安全性について、大きな影響を与えました。切れたナイロンザイルは、大町山岳博物館に収蔵されています。
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この小説は1958年に映画化されていて、主演は菅原謙二(菅原文太ではありません、念のため)、彼を取り巻く二人の女性が野添ひとみ、そして当時日本一の美女といわれた山本富士子です。
徳澤園には、撮影に使われたというピッケル(今の感覚からすると、ずいぶん長いです)や、キスリング(今でいうザック)が展示されています。
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私も若いころに映画館で見た記憶がありますが、多分1970年ころの再上映だと思います。最近DVD化されたので買ってしまいましたが、やはり時代を感じました。
 
9月14日(月)
徳澤園の裏から長塀尾根を登ります。蝶が岳まで標高差1000m少しですが、今日はこれだけの行程で余裕があります。急登ですが、うまくジグザグに切ってあったり、大変登りやい道です。
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長塀山(2565m)をすぎると傾斜も緩やかになってきて、ぬかるんでいるところも多くあります。
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蝶が岳の南には、二つの稜線が平行に並んでいる二重山稜があり、その間の窪地に、多くの池があります。
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2500mを過ぎてもなかなか展望はなかったのですが、頂上までもう少しというところで突然展望が開け、槍穂高連峰が一望できます。
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特にここからは、小説「氷壁」の舞台となった前穂東壁が間近に見られます。頂上から右に延びる尾根が前穂北尾根で、裏側の涸沢方面から見ると恐竜の背中のように見える尾根です。前穂北尾根は岳友会で一度、県連の講習会で2回行っています。頂上右手に目立つピークが4峰で、ここを左に下って3峰を登るところが核心部です。
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蝶ヶ岳ヒュッテ到着は11時頃、早いので到着時にはそんなにテントはなかったのですが、次第に増えて、平日にもかかわらずにぎわっています。
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午前中に着いたので暇を持て余すかもと思っていましたが、天候もよかったので周辺をぶらぶらしたり、早めの食事の準備をしているとすぐに時間が経ちました。皆さんも、のんびりと時間を過ごしておられました。
蝶ヶ岳から穂高連峰の展望は素晴らしく、左から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、そしてその右に大キレットが見えます。
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久々に晴れ間が出たせいか、ヘリの荷揚げも何回もやっていました。
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 明日に備えて日没と同時に6時頃に就寝しました。
 
9月15日(火)
この日は長距離になるので、日の出1時間ほど前に出発、展望の良い蝶槍でちょうど日の出を迎えました。上空の雲がほとんどなくすっきりとしたご来光でしたが、輪郭はぼんやりとしていました。
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奥穂、涸沢岳、北穂が朝陽に染まります。
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 槍ヶ岳は少し遠いですが、北鎌尾根が豪快です。
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南の方、遠く左は御嶽山、右が乗鞍岳、手前は上高地からそびえる霞沢岳です。
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常念岳に向けて出発、再び樹林帯になり、きれいな池もありました。
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蝶槍からは200mの下り、これから登りかと思えば再び100mのピークの登り降りです。やっと常念岳がすっきりと見えてきましたが、ここからもまだ下ります。
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森林限界を抜けると岩ゴロゴロのところになります。踏み跡がはっきりせず、どこでも歩けますので、赤ペンキのマークを注意しないと危ないところに行ってしまいます。
常念岳は2回目で、若いときに登った時も常念の登りは大変だったように覚えていますが、蝶槍からの下りと途中のピークの登り降りも含めて、やはり大変でした。
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やっと常念頂上に到着、これから向かう大天井岳への稜線が見えます。中央少し左のなだらかなピークが大天井岳です。右のこれもなだらかなピークは横通岳です。
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槍が近くになってきました。右へ延びるスカイラインは北鎌尾根、手前の稜線は表銀座、喜作新道で、表銀座は水平で楽そうです。ただ、かすかに見えている西岳ヒュッテを過ぎると、ドーンと下って、それから東鎌尾根のしんどいけれど、一歩ごとに槍が近づく楽しい登りになります。
北鎌尾根はバリエーションルートで、岳友会も過去に2回歩きました。
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穂高連峰の形がだいぶ変わってきました。前穂・奥穂の吊り尾根が目立つようになり、右の北穂もどっしりとした姿になります。
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常念岳の下りも結構急でした。常念乗越に到着して、ここから一の沢に下ることも考えていたのですが、予定どおりの時間で到着したので、計画どおり大天井岳に向かいます。
常念乗越から一登りすると横通岳、名前のとおり、頂上を通らずトラバースルートとなっています。 疲れていたので大変助かりますが、元気な人は頂上経由の道を登っていました。
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ウラシマツツジの紅葉らしいです。この辺にたくさんありました。
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15時前に大天荘テント場に到着、一部のテント場がヘリの荷揚げのために使えないこともあって、良い場所を探すのに苦労しましたが、一人テントなら大丈夫のところが見つかりました。私は中央の薄いブルーのテントですが、最近はいろんなタイプがあるようです。
夏山シーズンが終わった平日でこの賑わいですので、夏山シーズンの休日だと大変かもしれません。ロケーションは良く、テントの中から槍が見えました。
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夕方には雲が増えてきましたが、上空は秋の雲のようです。
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9月16日(水)
大天井岳頂上はテント場から10分ほどでなので、頂上でご来光を迎えました。
予報どおり雲が増えていますが、朝焼けがきれいです。
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槍が目立つようになり、穂高連峰が小さくなりました。
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槍が大きくなり小槍も見えています。
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大天井岳を下ると、あとは燕岳へのアップダウンの少ない道となります。
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遠くに立山と剣も見えています。
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大天井岳を振りかえります。大天井岳は2922mあって常念山脈の中で最も高いですが、常念岳と違って深田久弥は百名山に選んでいません。安曇野から見ると常念岳が目立つからでしょうか。
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この辺に来ると、野口五郎岳を中心として、裏銀座の稜線がきれいに見えます。
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燕山荘までもう少しになりました。
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燕山荘から槍穂高連峰を振りかえります。穂高連峰は目立たなくなりました。
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燕岳は目の前ですが、温泉に入るのを優先して燕岳はカットし、燕山荘から下山しました。
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合戦小屋の手前で槍とお別れです。中房温泉から登ってくると最初に槍が見えて感動するところです。私も50年前に、生まれて初めて槍ヶ岳を見たのはこの場所でした。
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合戦尾根の下りからは、ところどころで富士山と南アルプスが見えます。
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合戦小屋のナナカマドの実は赤くなっていました。葉の紅葉はごく一部ありましたが、これからです。
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合戦尾根といわれる燕岳のこのルートは北アルプス三大急登の一つで、標高差は1200m以上あります。残りは表銀座の烏帽子岳へのブナ立尾根と剣の早月尾根です。
2年前に登った時はそんなに大変と思いませんでしたが、下りは今回が初めてで、高齢になると下りが大変です。階段も多く、木の根もあって「よっこらしょ」と降りるところをトレランの人や若い人は、すいすいと降りていかれます。仕方ないですね。
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かなり疲れたところで登山口の中房温泉に13時頃到着。バスの出発時刻までに温泉に入って、その後はJR穂高駅から乗り換え時間もほとんどなく20時前に滋賀の自宅に帰りました。
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この山域では燕岳から大天井岳を経て槍ヶ岳に向かう表銀座コースが魅力的なため、常念にはこれまで1度しか登りませんでした。今回、パノラマ銀座といわれるだけあって、蝶~常念~大天井の間も、槍穂高連峰を見ながら歩ける縦走路として再認識しました。特に蝶ヶ岳から見る穂高連峰は素晴らしいです。
K3号

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